妊娠するために
Chapter 1 女性の選択と晩産
近年、ワークライフバランスを重視しながら、自分の人生を選択する女性がほとんどを占めています。女性も大学を出て就職や起業をする時代です。ある程度仕事にも慣れ、収入も安定してくると次は恋愛や結婚に目を向ける方もいるでしょう。いわゆる“適齢期”で結婚・出産をする方、仕事が楽しくて結婚は考えていないという方、結婚はしたいけれど今はいいという方。今は昔と違い、女性が生きていく上で選択肢が広がったと思います。さて、ここ数年の間に不妊症や不妊治療という言葉は一般的な言葉になりましたが、背景には女性の社会進出に伴う晩婚・晩産化があると考えられています。不妊治療は元来健康な卵子を多く持っていても妊娠しない20~30歳代を対象とした治療法といわれていましたが、晩婚化の影響で、今や30歳代後半から40歳代の方がそのほとんどを占めているのが現状です。
Chapter 2 生殖適齢期
女性には生殖適齢期という期間があります。20~30歳代前半で、健康な卵子が卵巣内にたくさん存在し、なおかつ妊娠・出産に適した年齢のことを言います。つまり、この年齢の間であれば妊娠・出産をしやすく、この年齢を過ぎると少しずつ妊娠は難しくなり、また、妊娠しても卵子の染色体異常により流産になるリスクが高まっていくことになります。ただ、私がお話していることはあくまで教科書的な事であり、実際はこの期間を過ぎても元気な赤ちゃんを産んでおられる方もたくさんいらっしゃいます。 対して男性の精子には、この生殖適齢期という期間はありません。何故でしょうか?それは卵子と精子の発生の仕方に違いがあるからなのです。次項では卵子と精子のお話をしていきたいと思います。
Chapter 3 卵子の数
基本的に男性の精子は毎日作られています。ところが、女性の卵子は、最初に一定量作られると以降は増えることがなく減り続けていきます。ここに大きな違いがあるのです。女性にのみ生殖適齢期といわれる時期があるのもそのためです。
女性の年齢と卵子の数の関係については下記となります。
お母さん妊娠12週の時…あなたの卵巣:60万個の卵子ができます
お母さん妊娠24週の時…あなたの卵巣:600~700万個の卵子ができます(ピーク)その後自然に減少
お母さん出産… あなたの卵巣:約200万個の卵子を蓄えて誕生!
あなた7歳:約30~50万個の卵子
あなた思春期:約20万~40万個(生理が来た!)
あなた20~30代半ば:1ヵ月に1回の排卵
あなた38歳頃:年齢と共に卵子も減少
お母さんのお腹の中にいる時に作られる卵子は、受精能力を持たない卵で、年齢があがると共に自然に消えていきます。これは、より優秀な卵を残していくためのシステムともいえます。そうして思春期になり、脳から性ホルモンが分泌されると、卵巣に残った卵が刺激を受けて再び活動を開始します(=初潮)。この時の卵は受精能力のある卵に成長していきます。 さて、この卵ですが、実は排卵の3~4ヵ月前から準備が始まり、1,000個の卵の中から120日をかけて1個が選ばれて排卵に至るという仕組みになっています。しかし、30代後半になると500個の卵から1個が選ばれるようになっていきます。そうして段々数を減らし、最終的に残り1,000個を切ると閉経するといわれています。ただし、毎月排卵がある方と数カ月に1個しか排卵がない方で残卵数に大きな違いがあります。 もしくは、20代でもチョコレート嚢胞など卵巣に病気があり、卵子が育ちにくい状態の方は、卵が採れにくい、質があまり良くないということにもなります。また、せっかく選ばれて排卵した卵ですが、その中に卵子が入っていない空胞という状態の周期になることもあるのです。
Chapter 4 不妊治療の実際
少し古い話ですが、平成15年度の我が国における不妊患者数は46万人いるというデータ(※)があり、今やその数は増加の一途をたどっていると考えられています。これは前述したように晩婚・晩産化の影響が大きいと言えるでしょう。子供を望む夫婦の場合、結婚当初は“そのうち子供は授かるだろう”と思い、あまり焦ることはないようですが、何年も経つと親戚や友人からの“子供はまだ?”という言葉に重圧と焦りを感じはじめ、自己嫌悪に陥るようになっていきます。そして病院に行き、検査をして、自分の体がどのような状態かということに初めて向き合うのです。卵巣年齢の話をされてショックを受けられた方もいるでしょう。そもそも排卵していないと言われた方もいるでしょう。または生理周期と合っていないタイミングをとっていた方もいるでしょう。ご主人に問題があった方もいるでしょう。個体差はありますが、共通していることは不妊症ということです。
現在では様々な原因による不妊に対して、年齢や背景を考慮し、様々な治療法が医師より提案されます。タイミング法や人工授精、体外受精という方法です。では、病院ではどんな治療を受けるのか具体的にみていきましょう。
①タイミング法 比較的若いご夫婦、結婚年数が短いご夫婦、検査をしても何も問題がないご夫婦は、この方法から始めます。生理周期を把握したうえで、エコーによる卵胞の確認と、タイミングをとる日を医師から指導されます。 ②人工授精 タイミング法を半年間やっても妊娠しない場合、精子の運動率に問題がある場合、または頸管粘液が粘稠で精子の通過障害がある場合などが人工授精の適応になります。ただし、ご夫婦の希望により半年間以上人工授精を行う方もいます。 ③体外受精 人工授精を約6回行っても妊娠しない場合や、女性の年齢が高い場合、卵巣に問題がある場合などに適応となります。この体外受精においては、精子の状態によって受精させる方法が2つあります。また、採卵するまでの方法は様々あり、女性の年齢と卵巣年齢などを考慮して医師が方法を説明します。
※2003年厚生労働科学特別研究「生殖補助医療技術に対する国民の意識に関する研究」
Chapter 5 不妊鍼灸治療
私が今まで治療をさせていただいた患者様も30代後半~40代の方がほとんどです。多くの方は不妊治療歴が長く、病院を色々と変えては何度もトライされていました。場合によっては、ご主人が単身赴任中で奥様が一人で治療されている方や、新幹線で毎回3時間かけて病院へ通院されている方など、とてつもない努力をされてる方もいらっしゃいました。それでも妊娠しないということで、新しい治療法を求めて鍼灸院に来院される方ばかりでした。
では、鍼灸というものは、不妊症に対してどのような効果をもたらすのでしょうか?実は鍼灸治療というのは、不妊症にとてもよく効果を発揮してくれるのです。特に体外授精時の採卵で顕著に効果が出やすく、鍼治療を受ける前後比較で採卵数の増加や、授精をする卵が増加することが確認されています。病院では薬や注射を使いたくさんの卵を採卵しますが、その卵が受精能を持った卵かどうかは授精させてみないと分かりません。ですから医師はできるだけ多くの卵を採卵するのです。当院の鍼灸治療では、病院での採卵時に卵ができるだけ多く採れるよう、できるだけ受精能を持った卵であるようアプローチしていきます。
また、医師は卵巣中にまだ眠っている卵をたくさん採卵することはできますが、卵の質自体を上げることはできません。しかし、鍼灸治療は、鍼やパルス通電で不妊症に効能のあるツボを刺激することで、卵のアンチエイジング、つまり卵の質をあげることが可能な治療です。さらに当院では、卵巣に対する近赤外線照射によってその効果を上げています。
私達は、不妊で悩むより多くの方々に西洋医学のみではなしえないこの変化を実感していただきたいと思っています。そして、より早くご懐妊されるようご一緒に頑張りたいと考えています。当院の不妊鍼灸治療は、決して現在の病院の治療を邪魔するものではなく、病院ではできないことを補完し、妊娠する可能性を底上げする治療です。不妊症でお悩みの方は是非一度当院にお越しください。最後まで全力でサポートして参ります。
鍼灸施術所誠療庵
副院長/不妊鍼灸室長 山本藍
妊娠中の継続治療
Chapter 1 継続治療
さて、ここまで色々とお話をして来ましたが、妊娠すると、何とも嬉しい気持ちになりますね!
しかし、うれしい反面“流れてしまわないかなあ”と流産を心配する方もいらっしゃいます。
実は妊娠9週(心拍確認)まで流産する率は高いと言われており、原因はほとんどの場合、おかあさん側ではなく、赤ちゃん側にあると言われています。もっと言うなれば染色体異常のあった卵が受精や着床までこぎつけ、更に心拍確認まで成長するものの、それ以上成長できずに流れてしまうのです。
当院では、この流産という悲しい結果を避けるべく、妊娠された後も継続治療を行っております。
Chapter 2 逆子とは
赤ちゃんがお腹の中でスクスクと元気に育ってくれると何とも幸せな気持ちになりますね。“早く会いたいなぁ~”とワクワクドキドキしながら妊婦ライフを送っておられる方も多いと思います。しかし妊娠中は予期せぬトラブルに見舞われる事も。その中の一つが逆子です。逆子とは胎児がお腹の中でお尻や膝・足を下にする胎位をとっていて、妊娠36週までに改善しなければ帝王切開となるリスクが高まる状態のことをいいます。
Chapter 3 逆子の原因
逆子の原因は、母体側と胎児側のどちらかにあると言われています。まず、母体側の原因として妊婦自身の体格が小さく、骨盤が狭い事。また、生まれつき子宮が小さかったり、双角子宮や前置胎盤なども原因と考えられています。胎児側の原因として、胎児の発育不全や低出生体重児など体が小さいことでクルクル回りやすいこと。また、羊水過多で回りやすい状況にあることも原因と言われていますが、多くは原因不明です。
Chapter 4 妊娠30週頃
上記のように骨盤が狭いなどの理由は仕方ありませんが、通常の場合、妊娠28週頃になると赤ちゃんも体が急に大きくなって、出産に向けて準備をし始めます。今まで自由に動き回っていましたが、少しずつそれができなくなってくる頃です。それでも動くこと自体はできるので、自分の向きたい方向へ向いてしまい、なかなか逆子が治らないという事態になってきます。妊娠30週頃になるとドクターから逆子の話をされ始めます。
Chapter 5 お灸で逆子治療
その後、逆子体操が始まりますが、最近では逆子体操と同時にお灸を推奨する助産師さんや病院も増えてきているんです。体操を頑張ってもなかなか改善しない場合、ツボ刺激やお灸がいいと聞いたことはありませんか?
当院ではこの逆子治療にも力を入れています。胎児心音計を使用し、赤ちゃんの向いている方向を確認した後、逆子であれば効くといわれているツボにお灸をします(病院で逆子と言われていても当院へ来院した時には改善していることもあります)。しっかりとお話を聞きながら治療をさせていただきますので、逆子でお困りの際は是非一度当院にお越しください。
産後の体調ケア
産後トラブル
お産は人それぞれ違います。そして産後の回復具合も千差万別です。
10ヶ月待ちわびた我が子との対面は感動するものがありますが、出産時体力を使いはたし、休む間もなく授乳が始まります。最初は母乳が出ないので、母乳マッサージという非常に痛いマッサージに耐えてちょっと出た母乳を我が子に与える所からスタートします。私も経験しましたが、体力が回復しないまま、どんどん進んで行く感じがしました。加えて、ホルモンバランスが崩れるので、余計にイライラしていたのを覚えています。
産後のトラブルとして
①会陰切開部や裂傷の痛み
②骨盤の痛み・腰痛
③排尿トラブル
④マタニティブルー
⑤産後うつ
⑥授乳時の肩こり
⑦乳腺炎
⑧腱鞘炎 などがあります。
出産経験のある方なら、何かしらトラブルはあったと思います。もちろん現在進行形でトラブルを抱えている方もおられるでしょう。そんなママたちに“休む”時間は必要です。
欧米、特にヨーロッパでは出産や育児はママが主体だそうです。ですから妊娠中にバスに乗れば席を譲ってもらえたり仕事をしていたら、復帰するまで待ってくれたりするそうです。ところが、日本は「赤ちゃんのために」と言われ、赤ちゃんが主体でママが後回しになる傾向があります。
体も回復していないのに「赤ちゃんの為にがんばりなさい」と言われると、つらいですよね。体もつらいと心もつらくなってくるので、うつになるという訳です。そうならないためにも、自分の体を休ませてあげる事が必要ですし、メンテナンスは必要だと考えます。
当院では腰痛や頸(くび)こり・肩こり・腱鞘炎などの治療も行っております。また鍼灸はリラックス効果が非常に高いと言われております。是非一度お越し下さい。育児をがんばるために、ご自分の体を癒して下さい。